化学工学論文集
Online ISSN : 1349-9203
Print ISSN : 0386-216X
ISSN-L : 0386-216X
広領域,その他
水熱反応条件が下水汚泥処理残渣性状へ与える影響
小林 信介野村 真平藤村 幸弘坪井 博和木本 孝司板谷 義紀
著者情報
ジャーナル 認証あり

2011 年 37 巻 5 号 p. 460-467

詳細
抄録

消化汚泥を原料として水熱処理実験を行い,処理温度,処理時間など水熱処理条件が下水汚泥の処理残渣性状に及ぼす影響について検討を行った.実験では処理温度を393 Kから533 K,処理時間を5 minから20 min,スラリー濃度を14.3%と33.3%に変化させ水熱処理を行い,得られた処理残渣の元素分析,粒度測定,ζ電位測定を行った.液成分についてはpH測定を行うことで水熱処理条件が汚泥スラリーの性状に与える影響について評価した.また,水熱処理スラリーの定圧ろ過実験を行い水熱処理後のスラリー脱水性能についても評価を行った.水熱処理温度を高くするとともに汚泥成分の可溶化率は高くなり,533 Kにおいて約60%の固体成分が溶媒である水に可溶化した.処理時間が水熱処理残渣に及ぼす影響は処理温度が処理残渣性状に及ぼす影響に比べ小さいが,処理時間が長くなるとともに可溶化率に増大が見られた.下水汚泥中の固体成分の可溶化に伴い粒子径は小さくなり,スラリーのpH値は徐々に小さくなる傾向を示したが,処理スラリーのpH値については処理温度に対して極小値を持ち,処理温度が473 Kを境に処理温度の上昇とともに急激なpH値の増大が見られた.水熱処理による有機成分の加水分解反応と脱水反応により,組成やpH値が大きく変化することから処理スラリーのζ電位の絶対値にも大きな変化が見られ,473 Kまでは処理温度が高くなるとともに絶対値は徐々に小さくなり,さらに処理温度を高くするとその絶対値は逆に大きくなった.定圧ろ過装置における水熱処理スラリーの脱水性能は処理温度が高くなるとともに向上し,453 K以下の水熱処理スラリーが脱水困難であったのに対して473 K以上の処理を行ったスラリーにおいて脱水速度は急激に速くなり,処理残渣含水率を自己燃焼可能な52%程度まで容易に脱水可能であることがわかった.

著者関連情報
© 2011 公益社団法人 化学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top