2003 年 29 巻 1 号 p. 118-123
下水汚泥焼却灰からの有害イオンの溶出を抑制することを目的として,石炭燃焼ボイラーから得た炉底灰を下水汚泥焼却灰に被覆処理する技術を開発した.
下水汚泥焼却灰を造粒し,石炭炉底灰で被覆した後,被覆造粒体を急速に加熱することにより,造粒体表面層である炉底灰のみを溶融させた.炉底灰のみ溶融させる条件を選定するために,下水汚泥焼却灰,石炭炉底灰それぞれの熱伝導度を実測し,熱伝導に関する検討を行った.そして,その結果をもとに,炉底灰よりも溶融温度の低い内部の下水汚泥焼却灰表面温度を溶融温度まで上昇させないような条件を選び,炉底灰表面のみを溶融させた.溶融被覆した造粒体については,塩酸並びに硝酸水溶液を用いて溶出試験を行ったところ,いずれの溶液においても砒素の溶出は観察されなかった.